栄養
幼児の栄養(1〜3歳):何を食べさせ、どれくらい与えるか
1〜3歳の幼児の栄養に関するエビデンスに基づくガイド:栄養ニーズ、不足しがちな5つの栄養素、バランスの取れた食事、偏食への対処法。
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この記事は一般的な情報提供を目的としており、専門的な医学的助言に代わるものではありません。お子さまについては必ず小児科医にご相談ください。
出典:WHO・CDC・AAP・NHS。推奨は国によって異なります。日本については厚生労働省をご確認ください。
赤ちゃんの食事から幼児食への移行は、子育てのなかでも特に戸惑いの多い時期のひとつです。与えられたものを素直に食べていた赤ちゃんが、食べ物について強いこだわりを持つ小さな人間へと変わっていきます。昨日は喜んで食べたものを今日は拒否し、ある日はたくさん食べたかと思えば次の日はほとんど食べない。朝は受け入れた食べ物を、夜には床に投げてしまうこともあります。これは正常な発達の一部です。イライラすることもありますが、異常なことではありません。
あまり語られないのは、この時期の栄養面の現実です。幼児には乳児期とも年長児とも異なる独自の栄養ニーズがあり、胃はまだ小さくすぐいっぱいになります。そして幼児のニーズに合う食べ物は、大人の健康を支える食べ物と同じではありません。この違いを理解することで、親は大人向けの栄養の枠組みを幼児の食卓にそのまま当てはめずに済むようになり、食事時間の不安がかなり和らぎます。
幼児の栄養が乳児期と違う理由
生後1年間、赤ちゃんの栄養の中心は母乳やミルクで、離乳食は生後6か月ごろから補助的に始まります。ところが12か月を境に状況は一変します。ミルクを卒業し、多くの家庭では母乳の回数も減っていくなかで、固形食が初めて本当の意味で栄養の責任を担うようになるのです。
同時に、幼児の成長は乳児期に比べてずっとゆるやかになります。生後1年でほとんどの赤ちゃんは出生体重の3倍近くまで増えますが、2年目の平均的な体重増加はおよそ2〜2.5kgほどで、1年目の3分の1程度のペースです。この成長の鈍化こそが、12〜15か月ごろに多くの親を不安にさせる「幼児の食欲低下」の主な原因です。子どもが病気になったわけではなく、成長のスピードが落ちたぶん必要なエネルギー量も少なくなっているだけで、食欲は実際のエネルギー消費に合わせて自然と調整されます。この自己調節の力を信じて無理に戦わないことが、この時期の親にとって大切な姿勢です。
幼児は年長児や大人とは三大栄養素の比率も異なり、脂質が1日のエネルギー摂取に占める割合は大人よりかなり高めであるべきとされています。だからこそ、幼児には低脂肪乳ではなく全乳が勧められます。幼児の脳は急速に発達している最中で十分な脂質を必要としており、この時期に不必要に脂肪を制限すると神経発達を妨げるおそれがあります。大人にとって望ましい低脂肪・高食物繊維の食生活は、2歳未満の子どもにはそのまま当てはまりません。
幼児が実際に必要とする食事量
幼児のエネルギー必要量は年齢や体格、活動量によって変わりますが、大人が見た目から想像するよりずっと少なめです。幼児の胃の容量は自分のこぶし、大きめの卵ひとつ分ほどしかありません。大人にとっては恥ずかしくなるくらい小さな「おやつ」に見える量が、幼児にとってはれっきとした一食分です。
よく紹介される目安に、「食品ひとつにつき年齢(歳)×スプーン1杯」という考え方があります。2歳児であれば、パスタもスプーン2杯、野菜もスプーン2杯、たんぱく質源もスプーン2杯というのが標準的なひと皿の量です。お皿の上ではばかばかしいほど少なく見えますが、これは幼児の胃に合わせて計算された量で、大人サイズの量を盛って食べきれずに残す無駄や食事どきのイライラを防いでくれます。
幼児の食事構成――1日3回の小さな食事と2〜3回のおやつ――は、単なる習慣ではなく、実際の胃の容量と体重に対して大人より速い代謝を反映したものです。2.5〜3時間以上何も食べていない幼児は機嫌が悪くなりがちですが、それは「わがまま」ではなく血糖値が下がって体が不快感を発しているサインであることが多いのです。おやつのタイミングを一定に保つことは、多くの親が思う以上に幼児の行動に良い影響を与えます。
幼児が最も不足しがちな5つの栄養素
バランスよく食べている幼児はたいてい必要な栄養を満たしていますが、偏食気味の子どもの食事では特定の栄養素が慢性的に不足しがちで、そのなかには発達に無視できない影響を与えるものもあります。
1. 鉄分
鉄欠乏は世界中の幼児にみられる最も一般的な栄養欠乏です。鉄が強化されたミルクから牛乳への切り替えと、この時期にありがちな偏食が重なることで、鉄不足のリスクが高まります。鉄は神経発達や認知機能、免疫の働きに欠かせません。赤身肉は最も吸収されやすい鉄源ですが、豆類やレンズ豆、鉄強化シリアル、葉物野菜といった植物性の鉄も、ビタミンCと一緒に摂ることで吸収率が大きく高まります。いちごやオレンジジュースを少し添えるだけで、鉄の吸収量が3〜4倍に増えるといわれています。詳しい食材リストは、乳幼児のための鉄分豊富な食品ガイドも参考にしてください。
2. カルシウムとビタミンD
幼児のカルシウム必要量は、乳製品または強化された代替食品を1日2〜3回とることでおおむね満たせます。ビタミンDはカルシウムの吸収を助けますが、十分な乳製品を飲んでいる子どもでも不足しがちです。食品からの摂取源が限られているうえ、最も自然なビタミンD源である日光を浴びる機会も、日照時間の少ない時期やしっかり紫外線対策をしている家庭では不足しやすいためです。
ビタミンDの推奨量は国によってかなり異なるため、ここで特定の数値を挙げることはあえて避けます。かかりつけの小児科医や乳幼児健診の場で、お子さんの状況に合わせた目安を確認するのがいちばん確実です。
3. 亜鉛
亜鉛は免疫機能や成長、傷の治りに欠かせないミネラルで、肉、魚介類、豆類、乳製品に多く含まれています。バランスよく食べていればたいてい十分に摂れますが、肉や豆類を避ける子どもでは不足気味になることもあります。亜鉛が不足すると食欲不振や成長の遅れ、感染症へのかかりやすさにつながるため、植物性中心の食事の幼児をもつ家庭は意識しておくとよいでしょう。
4. オメガ3脂肪酸(DHAとEPA)
脂の多い魚に含まれる長鎖オメガ3脂肪酸、DHAとEPAは脳と視覚の発達に極めて重要で、乳児期を過ぎても大切な役割を果たします。鮭やいわし、さば、ますといった魚を定期的に食べない幼児は、食事だけではオメガ3のニーズを満たせていない可能性があります。亜麻仁やチアシード、くるみは短鎖のオメガ3を含みますが、体内でDHAに変換される割合は高くありません。魚をあまり食べない幼児には、藻由来のDHAサプリメントも現実的な選択肢になります。
5. 食物繊維
便秘は幼児にとても多い悩みで、特に牛乳への切り替えや食事内容が限られてくる時期に目立ちます。十分な食物繊維は果物や野菜、豆類、全粒穀物から摂れます。白いパンや白いパスタ、加工されたスナック菓子には食物繊維がほとんど含まれていません。毎食・毎回のおやつに果物か野菜をひとつ添え、無理のない範囲で全粒穀物に置き換えるとよいでしょう。
バランスの取れた幼児の食事を組み立てる
管理栄養士エリン・サターが提唱した「責任分担」モデルは、幼児の食事に関して最も裏付けのある考え方です。何を、いつ、どこで食べるかは親が決め、食べるかどうか、どれだけ食べるかは子どもが決めます。この明確な役割分担によって、無理に食べさせようとする圧力(新しい食べ物への受け入れを下げてしまいます)と、安全な食べ物ばかりを与え続ける過保護な対応(偏食を固定化してしまいます)の両方を防げます。
バランスの取れた幼児の食事には、毎食それぞれのカテゴリーからひとつずつ――たんぱく質か良質な脂質の源、穀類かでんぷん質の野菜、果物か野菜(できれば両方)、乳製品かカルシウム代替食品――を組み合わせます。ナッツバターを塗ったトーストにバナナのスライス、コップ1杯の牛乳を添えれば、それだけで幼児の朝食として十分成り立ちます。大切なのは、多様な食べ物を根気強く提供し続けることであり、無理に食べさせることではありません。
新しい食べ物や苦手な食べ物と並べて、子どもが確実に食べられる「安全な」食べ物を毎食ひとつ用意しておきましょう。子どもは、他に食べたいものがなくても安全な食べ物を食べればいいとわかるため、食事のプレッシャーが完全になくなります。繰り返し無理なく食卓に登場させることで、何度もお皿の上で見てきたという理由だけで、以前は拒んでいた食べ物を受け入れ始める子どもも少なくありません。
ミルクの卒業:母乳・粉ミルクから牛乳へ
生後12か月を迎える頃、多くの家庭ではミルクから全乳への切り替えが勧められます。一気に行うこともできますし(多くの幼児は問題なく受け入れます)、1〜2週間かけてミルクと牛乳の割合を少しずつ変えながら段階的に進めることもできます。味や舌触りに敏感な子どもには、段階的な移行のほうが向いています。
全乳の目安量はおよそ480〜700ml、コップにして2〜3杯ほどです。これだけあれば、固形食への食欲を妨げることなくカルシウムと脂質をしっかり補えます。それ以上飲みすぎると鉄不足につながるとされています。牛乳自体に鉄分が少ないうえ、他の食べ物からの鉄の吸収を妨げる成分も含まれているためです。牛乳を飲みすぎている幼児は、食事全体としては問題なさそうでも、実際には鉄の状態がぎりぎりであることが少なくありません。
12か月を過ぎても母乳育児を続ける家庭もあります。WHOは2歳までの継続を推奨しており、母と子の双方が望むかぎり母乳は引き続き脂質やたんぱく質、免疫物質を届けてくれるため、牛乳を導入する栄養面での必要性は特にありません。ただしこの時期は、固形食の多様性が主な栄養源として一段と重要になります。
植物性のミルク代替品を幼児に選ぶ際は慎重な検討が必要です。牛乳に近い栄養プロファイルを持つのは強化された豆乳だけで、オーツミルクやアーモンドミルク、ライスミルクはたんぱく質と脂質がかなり少なく、管理栄養士の指導がない限り主なミルク源としては適していません。植物性中心の食事で育てている場合は、小児科の管理栄養士に一度相談する価値があります。
偏食の時期をどう乗り越えるか
新しい食べ物への恐れ、いわゆる食物新奇性恐怖は2歳から6歳ごろにピークを迎え、程度の差はあれ幼児の50〜75%ほどに見られると推定されています。これには進化的な背景があり、歩き回り自分で探索するようになった幼児は、口に入れる未知のものに慎重にならざるを得ませんでした。何万年も前には理にかなっていたこの本能は、現代の食卓ではとても不便なものになっていますが、行動上の問題でも子育ての失敗でもありません。
偏食に何が効くかについての研究結果はおおむね一致しています。プレッシャーをかけずに繰り返し出会わせることが、いちばん確かな方法です。子どもが新しい食べ物を受け入れるまでには通常15〜20回の接触が必要とされ、それ以上かかる子どもも珍しくありません。「接触」は「食べること」を意味せず、お皿にのっているのを見る、名前を聞く、他の人が食べているのを見る、触ってみることも含まれます。何回「見た」かを数えて5回程度で受け入れを期待するのは、現実的ではないタイムラインです。
偏食を確実に悪化させるものもわかっています。「あと一口だけ」という圧力、「ブロッコリーを食べたらデザート」という交換条件、「お友だちは野菜を食べているよ」という比較、子どもが気づいたときに信頼を損なう食べ物の隠し味、そして「今日はよく食べたね!」というプレッシャーになる褒め言葉です。これらはすべて、子ども自身のペースで進める食事を、親の評価を気にする「発表の場」へと変えてしまいます。
1〜3歳の幼児のための献立の一例
幼児食は手の込んだものである必要はありません。大切なのは多様さと適切な量、そして新しい食べ物のそばにいつも安心できる一品を置いておくことです。日本の幼児食では、ご飯・汁物・主菜・副菜という組み合わせが基本になっており、手づかみ食べができる大きさや固さに調理してあげることも欠かせません。味つけは大人よりずっと薄味を意識し、保育園に通っている場合は給食が1日の食事のかなりの部分をカバーしてくれることも多いので、家庭では給食で出ていない食材や食感を補う気持ちで献立を考えると無理がありません。
朝ごはん
- ご飯とみそ汁、卵焼き、やわらかく煮た野菜を手づかみできる大きさに
- 全粒粉パンにヨーグルトとバナナ、鉄強化のベビーシリアルをひとつまみ
- おかゆに納豆と刻んだほうれん草、みじん切りの果物を添えて
昼ごはん
- うどんに刻んだ鶏肉とやわらかく煮た人参、小松菜
- おにぎりと具だくさんみそ汁、豆腐のひと口サイズ
- やわらかいレンズ豆のスープにパンをひとかけ添えて
晩ごはん
- ご飯、鮭の身をほぐしたもの、蒸した野菜の副菜、汁物
- やわらかく煮込んだ豚肉と野菜の煮物、白ご飯
- ひき肉と野菜の和風あんかけ丼、汁物を添えて
おやつ
- やわらかい果物(バナナ、メロン、なし)と小さめのチーズ
- 全粒粉クラッカーとナッツバターまたはクリームチーズ
- プレーンヨーグルトに果物のピューレを少し
小児科の管理栄養士に相談すべきタイミング
偏食にはさまざまな程度があります。軽いものであれば、根気よく食べ物に触れさせ食卓を穏やかな雰囲気に保つことで自然と落ち着いていく、ごく普通の発達段階です。より重い場合には、感覚処理の特性や口腔機能の課題、不安、食物アレルギーなどが隠れていることがあり、専門家の力を借りることが本当に役立ちます。大切なのは「うちの子は偏食かどうか」ではなく、その偏食が成長や発達、家族の生活の質に大きく影響しているかどうかという点です。
受け入れている食べ物が10〜15品未満である、新しい食べ物を見たりにおいをかいだりするたびに繰り返しえずいたり吐いたりする、成長曲線から明らかに外れてきている、正式に評価されていない食物アレルギーが疑われる、あるいは食事の時間がほぼ毎日家族にとって本当につらいものになっている――こうした場合は、かかりつけの小児科医や乳幼児健診の場で相談し、管理栄養士や摂食の専門家への紹介を検討する価値があります。
深刻な食事の偏りに対しては、様子を見て待つよりも早めに専門家へ相談することのほうがはるかに効果的です。限られた種類しか食べない子どもでも、成長がきちんと順調であるケースは実際に多く、そのことを専門家から直接確認してもらえるだけで、多くの親にとって大きな安心につながります。
よくある質問
1歳の子は1日にどれくらい食べるべきですか?
1歳の子は1日に約1,000〜1,200カロリーが必要で、3回の小さな食事と2〜3回のおやつに分けて摂ります。食事の量は少なく、1食品につき年齢(歳)×スプーン1杯が目安です。大人にはおやつのように見える量が、幼児には十分な食事です。
幼児は牛乳を飲んでいいですか?
12ヶ月以降は全乳が適切です。1日480〜720mlが推奨量です。720mlを超えると、牛乳は鉄分が少なく鉄の吸収を阻害するため、鉄欠乏につながる可能性があります。
子どもが少ししか食べない場合はどうすればいいですか?
幼児の偏食は非常に一般的で、通常は一時的な段階です。プレッシャーをかけずに受け入れられた食品と一緒に多様な食品を提供し続けましょう。研究によると、子どもが新しい食品を受け入れるには15〜20回の暴露が必要です。
幼児にはビタミンサプリメントが必要ですか?
AAPは、1日960ml未満の強化乳を飲む幼児にビタミンD補給(600IU/日)を推奨しています。肉や豆類を避ける偏食の子どもには鉄のサプリメントが必要な場合があります。
小児科の管理栄養士に相談すべき時期はいつですか?
受け入れる食品が10〜15品目未満、体重減少や成長曲線からの逸脱、新しい食品で嘔吐やえずきがある場合は専門家への相談を検討してください。早期介入は待つよりはるかに効果的です。
保育園の給食だけで栄養は足りますか、家庭の食事で何か補う必要はありますか?
多くの保育園の給食は栄養バランスを考えて作られており、平日の昼食分としては十分なことがほとんどです。家庭では給食の献立表を参考にしながら、朝食や夕食、おやつで給食に出ていない食材や食感を補うくらいの気持ちでいると、無理なく1日全体のバランスを取りやすくなります。
ビタミンDについて、うちの子に合った具体的な量を知りたいときは誰に相談すればいいですか?
ビタミンDの必要量は月齢や生活状況によって変わるため、記事やインターネットの数値をそのまま当てはめるより、かかりつけの小児科医や乳幼児健診の場で相談するのが確実です。日光を浴びる時間や食事内容も含めて、お子さんに合った目安を一緒に確認してもらえます。
幼児に麦茶やジュースはどのくらい飲ませてもいいですか?
麦茶や水はカフェインも糖分もなく、食事の合間の水分補給として日常的に与えて問題ありません。一方でジュースは糖分が多く、飲みすぎるとおなかがいっぱいになって食事やおやつの量が減ってしまうことがあるため、量を決めて食後などに少量にとどめるのがおすすめです。
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